「左官(さかん)」という言葉を聞いて、どんな仕事かすぐにイメージできる人は少ないかもしれません。けれど実は、家やビル、店舗の内外装をつくるうえで欠かせない存在であり、建設現場の中でも特に“仕上げ”に関わる重要な職種です。モルタルやセメント、土や漆喰などを使って、壁や床の表面を整え、美しく仕上げる。それが左官の主な仕事です。
この仕事が注目されている理由のひとつは、「手に職をつけられること」。また、年齢や学歴よりも“やる気”と“継続”が重視される世界であり、未経験からスタートしても一歩ずつ成長できる環境が多くあります。現場の中で実際に手を動かし、目で見て、身体で覚えていく。そんな学び方に魅力を感じる人にとって、左官はぴったりの職種といえるかもしれません。
見習いの1日の流れ|最初は何をする?どこまで任される?
左官の仕事に未経験で飛び込んだとき、いきなり壁を塗るような作業を任されることはありません。最初は、現場の段取りや材料の準備、道具の手入れ、職人のサポートなど、基本的なところからスタートします。いわば“現場の空気”に慣れていくことが、最初のステップです。
朝は早く、作業は屋外も多いため、最初は体力的にきつく感じるかもしれません。しかしその分、朝からしっかり動いて一日が終わる頃には「今日も仕事したな」と実感できるメリハリがあります。先輩職人の近くで道具を渡したり、手元で動きを見たりしているうちに、自然と技術や流れが身についていきます。
道具の名前、材料の配合、コテの使い方など、一度に覚えることは多くありません。まずは“自分の動きが誰かの役に立っている”という感覚を持つことが大切です。そのうちに、少しずつ塗る作業や下地づくりなども任されるようになります。覚えるスピードに個人差はありますが、焦る必要はありません。
現場には決まった「教科書」があるわけではないので、一人ひとりの習得ペースに合わせて、自然に教えてもらえることが多いのもこの仕事の特徴です。先輩の背中を見ながら、段階を踏んで“自分の仕事”が増えていく──それが、見習いから始める左官の1日の流れです。
覚えることと求められる姿勢|技術よりも大切な“基本”
左官の仕事には、確かに技術が必要です。材料の扱い方、塗り方のクセ、仕上がりの丁寧さ──どれも一朝一夕で身につくものではありません。でも、だからといって「最初からセンスがなければ無理」という世界ではありません。むしろ大切なのは、技術以前の“基本の姿勢”です。
たとえば、朝のあいさつ、現場での返事、道具をきれいに使うこと、材料を丁寧に扱うこと。そんな当たり前のことが、職人として信頼されるかどうかに直結していきます。誰かに教えてもらうときも、ただ黙って聞くのではなく「どうしてこうするのか」と考えながら聞く姿勢があると、覚えるスピードも自然と早くなっていきます。
見習いのうちは「できなくて当たり前」だからこそ、「できるようになりたい」という気持ちがあるかどうかが何より大切です。ベテランの職人も、最初は同じように見習いからスタートしています。上手くいかないときにすぐ投げ出すのではなく、地道に、こつこつ続ける。それが、気がつけば“続けられる人”になっていく近道です。
現場でのサポート体制|先輩との関わりや成長ステップ
未経験から左官の仕事を始めるうえで気になるのは、「ちゃんと教えてもらえるのか」という不安かもしれません。実際、現場の仕事は見て覚える部分も多く、一から十まで指導するスタイルではないこともあります。けれど、それは決して放任という意味ではありません。現場では、「任せすぎず、手を出しすぎず」という絶妙な距離感で先輩がフォローに入っています。
たとえば、最初に使うコテの持ち方や動かし方。これは言葉だけでは伝えきれないものですが、実際に先輩の手元を見ながら自分で動かす中で、「なるほど、こういう角度か」と腑に落ちていきます。うまくいかないときは、すぐに見ている人が声をかけてくれる。そうした小さなやり取りの積み重ねが、技術や考え方の“芯”になっていきます。
また、現場は基本的に複数人のチームで動いています。材料をつくる人、塗る人、段取りを整える人──それぞれが役割を持ちながら、流れるように作業を進めていく。その中にいることで、自分の動きが誰かにつながっていることを実感できるはずです。
成長には時間がかかりますが、焦る必要はありません。1年後、3年後と少しずつ任される仕事が増えていくのが、何よりの成長の証。目の前の作業をこなすだけでなく、背景を理解し、考えて動けるようになること。それが、見習いから職人へと変わっていく道のりです。
桑路建塗では、そんな“育つ過程”を大切にしています。未経験から始めたい方、まずは現場の空気を知ってみたい方も、ぜひ一度こちらをご覧ください。
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よくある不安とそのリアルな答え|“力仕事?きつい?”に現場から答える
左官の仕事に興味はあるけれど、「体力的に不安」「力仕事ばかりじゃないの?」「建設現場って怖そう」と感じる方もいるかもしれません。たしかに屋外の作業も多く、体を動かす時間は長めです。しかし、必要以上の力が求められるわけではなく、“道具をうまく使う”ことが仕事のコツでもあります。
たとえば、モルタルやセメントを混ぜる作業も、機械や道具を使って効率よく進めることが一般的です。また、壁を塗るときに必要なのは「力」よりも「安定した手の動き」。均等に仕上げるためには、むしろ余計な力を抜くことが大切になる場面も多いのです。
また、現場の人間関係についても、昔のような“見て覚えろ”という空気は少なくなりつつあります。とくに桑路建塗のような地域密着型の企業では、一人ひとりの成長を見守りながら教えていく風土が根づいています。最初はわからないことがあって当然。むしろ、わからないままにしない姿勢こそが信頼につながります。
この仕事が向いているかどうかを判断するのに、最初から器用である必要はありません。「知りたい」「やってみたい」という気持ちさえあれば、一歩を踏み出すのに十分です。誰もが最初は初心者であり、そこから続けてきたからこそ“職人”と呼ばれる日が来る。それが左官の仕事です。
一歩ずつ、職人への道を歩むという選択肢
左官の仕事に興味を持ったきっかけは、人それぞれかもしれません。手に職をつけたい、安定した仕事をしたい、ものづくりが好き──理由はどうあれ、この仕事は「自分の手で形を残す」実感にあふれています。毎日の作業は地道でも、終わったあとに自分の仕事が目に見えるかたちで残るのは、大きなやりがいのひとつです。
もちろん、すぐに一人前になれるわけではありません。最初は戸惑うことも多いでしょう。でも、そのすべてが「職人としての地盤づくり」だと思って、一つずつ経験を積み上げていく。その姿勢こそが、この仕事を長く続けるための原動力になります。
そして何より、「未経験からでも挑戦できる」という選択肢が残されていることが、この業界の魅力でもあります。年齢や学歴に縛られず、実際の仕事の中で評価される。そんな環境で、自分らしく働きたい人にとって、左官は確かな可能性を秘めた職種です。
「少し気になる」と思ったその気持ちを、そのままにしないでください。まずは、現場の雰囲気や働く人の声に触れてみることから始めてみませんか。
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