「建設業界は将来性がない」「人手不足で終わっていく業界だ」──そんな言葉を聞いたことがある方も多いかもしれません。確かに、建設業は今まさに大きな転換点にあります。高齢化、人材不足、働き方改革、さらにはデジタル技術の導入など、変化の波は止まりません。しかし、だからといって「先がない業界」なのかといえば、それはまったく違います。むしろ今は、新たな役割や価値が問われ、変わるチャンスが生まれている時期でもあるのです。本当にこの業界は“なくなる運命”にあるのか。それとも、形を変えながら新しいステージへ進んでいくのか。その答えは、現場を知る人の目線にこそあります。ここでは、これから10年という時間軸で建設業界を見つめ直し、どんな課題があり、どんな可能性があるのかを読み解いていきます。
人手不足と技術継承|現場の高齢化がチャンスに変わる理由
今、建設業界で最も深刻な課題のひとつが「人手不足」です。特に職人と呼ばれる技能系の人材は、高齢化が進み、現場を支えてきたベテランたちが少しずつ引退の時期を迎えています。一見するとマイナスのようにも思えますが、これは見方を変えれば“新しい人が活躍できる余白が生まれている”ということでもあります。
これまでベテランが担っていた作業や判断を、若手が一つひとつ覚え、引き継いでいくことで、現場の質が落ちるどころか新しい視点や柔軟な考え方が加わっていく。そうした動きは、すでにいくつもの現場で始まっています。特に、手仕事や技術がものを言う左官やコンクリート工事の分野では、実際に手を動かしながら覚えていく環境が整っており、「仕事をしながら技術が身につく」ことに魅力を感じる人も増えてきています。
また、道具や資材、工法が日々進化している今、昔ながらのやり方だけに縛られる必要はありません。現場では、経験と新しい知識を組み合わせて、「今のやり方」を柔軟につくっていく姿勢が求められています。若い人材が活躍するための“余白”は、これまでになく広がっているのです。
デジタル化と職人の関係|ICT化がもたらす働き方の変化
建設業界にも、今や“デジタルの波”が確実に押し寄せています。図面の電子化や現場管理アプリの導入、ドローンによる測量、さらにはAIによる進捗管理など、かつては紙と経験で回っていた世界に、次々と新しい技術が加わりつつあります。一方で、それによって「職人の役割が奪われるのでは?」と不安を抱く声もあるかもしれません。
ですが実際の現場では、デジタル技術は“代わりにやってくれる存在”というより、“仕事を支えてくれる存在”として受け入れられ始めています。たとえば、施工前に3Dモデルで完成イメージを共有することで、作業ミスが減り、手戻りが少なくなる。あるいは、材料の発注ミスをアプリで防げるようになったことで、現場の負担が減る。こうした変化は、特に若手にとって「業界が思ったよりも合理的で働きやすい」という印象につながっているのです。
つまり、技術の進化は“人の代替”ではなく、“人がよりよく働ける”ための手段に変わってきているということ。今後10年で、こうした技術はさらに進化することが予想されます。だからこそ、若い世代の「ITに強い」という強みが、これからの現場で大きな武器になるのです。
持続可能な街づくりへ|再生・保守・リノベーション市場の拡大
これまでの建設業は、「つくること」が中心でした。新しい建物や道路、構造物をゼロから立ち上げることが、主な役割とされてきた時代です。しかしこれからの10年は、「つくる」だけでなく「直す」「活かす」ことがより重要になってきます。たとえば、人口が減少していく地域では、すでにあるインフラや建物をいかに長く、安全に使い続けるかがテーマとなりつつあります。
実際に、リフォームやリノベーション、耐震補強、インフラの維持管理といった分野は、年々需要が高まっています。これは、ただ壊して新しく建てるよりも、コストや環境負荷の面でも現実的だからです。こうした動きにより、左官や補修、仕上げといった“細部を整える”仕事の価値が再評価されるようになっています。
また、公共工事でも「ストック活用」へのシフトが進んでおり、維持管理や美観の再生を担う職人の技術が求められる機会は確実に増えています。見た目をきれいにすること、使いやすくすること、それ自体が“未来のまちづくり”に直結しているのです。つくって終わりではない。直して、活かして、支えていく。これからの建設業には、そんな新しい価値観が根づいていくでしょう。
左官・コンクリート工事の未来|“なくならない仕事”としての価値
デジタル化や機械化が進んでも、すべての作業が機械で完結するわけではありません。特に、左官やコンクリート工事のように“現場ごとに条件が異なる”作業では、最後の仕上げは今もなお職人の技術に委ねられています。素材の状態、気温や湿度、周囲の環境──これらに応じて判断し、その場で調整できるのは、やはり経験と感覚を持った人間だからこそできることです。
また、住宅・施設・道路・橋・ダムなど、用途や規模を問わず、コンクリートはあらゆる場面で使われています。それを支える現場作業は、時代が変わっても「必要とされ続ける仕事」です。つまり、仕事がなくなるどころか、担い手さえいればこれからも継続して求められ続けるという現実があります。
技術革新と並行して、人の手にしかできない領域が残る──このバランスのなかで、若い世代の活躍の場は確実にあります。特に、道具や材料、作業手順に対して柔軟に対応できる世代が入ることで、業界そのものが変わるきっかけになる可能性も秘めているのです。
桑路建塗では、こうした“変化の中で続く仕事”を支えながら、新しい仲間を迎える準備を進めています。変わりゆく建設業の中で、安定した技術を学び、将来を見据えた働き方をしたい方は、こちらもぜひご覧ください。
▶︎ https://www.kuwaji.com/workstyle
桑路建塗が考える「建設業のこれから」に、あなたはどう向き合うか
ここまで、建設業界がこの10年でどう変わっていくのか、そしてその中で左官・コンクリート工事がどんな価値を持ち続けるのかを見てきました。確かに、課題は多く存在します。人手の不足、技術の継承、働き方の見直し、そしてデジタルとの共存。けれど、それらはすべて“変わるためのチャンス”とも言えます。
むしろ、今このタイミングだからこそ、自分の手で現場を支え、仲間と共につくり上げていくやりがいを感じられるのではないでしょうか。昔ながらのやり方だけにこだわるのでも、ただ新しい技術を追いかけるのでもなく、目の前の現場とまっすぐ向き合いながら、ひとつずつ経験を積んでいく。その延長線上に、あなた自身の“職人としての未来”が見えてくるはずです。
今はまだ漠然と「興味がある」というだけでも構いません。まずは一歩、業界の中に入ってみる。その第一歩が、きっと将来の選択肢を広げてくれます。